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中空糸膜の除去性能はどこまで?バクテリア・ウイルス・化学物質を完全ガイド

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中空糸膜とは?高性能ろ過を実現する構造の秘密

中空糸膜(ちゅうくうしまく)は、水処理や医療分野で広く活用されている高性能なろ過膜です。

その名の通り、中心が空洞になったストロー状の繊維で構成されており、直径はわずか0.1mm程度しかありません。

この繊維の壁面には、目に見えないほど微細な孔(あな)が無数に開いています。

水がこの孔を通過する際に、孔よりも大きな不純物が物理的に捕捉され、除去される仕組みなんですよ。

中空糸膜の最大の特徴は、その高い集積度にあります。

ストロー状の構造を束ねることで、限られたスペースの中に非常に広いろ過面積を確保できます。

そのため、コンパクトな装置でも大量の水を効率よく処理できるんです。

この構造が、家庭用浄水器から産業用の大型ろ過装置、さらには人工透析装置まで、幅広い用途で採用されている理由と言えるでしょう。

中空糸膜の除去性能を数値で見る

中空糸膜の除去性能を正しく理解するには、具体的な数値データを知ることが重要です。

ここでは、孔径、ろ過精度、そして除去率を示す指標について詳しく見ていきましょう。

孔径とろ過精度の関係

中空糸膜の孔径は、一般的に0.01~0.1マイクロメートル(μm)程度です。

この孔径は、髪の毛の直径(約70μm)と比較すると、実に1000分の1以下という極めて微細なレベルなんですよ。

孔径によって除去できる物質の大きさが決まります。

例えば、0.1μmの孔径を持つ中空糸膜は、細菌(サイズ0.5~10μm程度)を確実に除去できます。

さらに精度の高い0.01μm程度の孔径であれば、一部のウイルス(サイズ0.02~0.3μm程度)も捕捉することが可能です。

ただし、水に溶解しているイオン(カルシウムやマグネシウムなど)は孔径よりもはるかに小さいため、中空糸膜を通過します。

つまり、体に必要なミネラル分は残したまま、有害な微粒子だけを除去できるわけですね。

LRV(対数除去率)で分かる実力

中空糸膜の除去性能を示す重要な指標に、LRV(Log Reduction Value:対数除去率)があります。

LRVとは、ろ過前後で物質がどれだけ減少したかを対数で表したものです。

計算式は「LRV = log(ろ過前の濃度 / ろ過後の濃度)」となります。

例えば、LRVが3であれば除去率99.9%、LRVが6であれば除去率99.9999%を意味します。

高性能な中空糸膜では、LRV>9.0(除去率99.9999999%)という驚異的な性能を示すものもあるんですよ。

この数値は、10億個の不純物のうち、999,999,999個以上を除去できることを意味します。

医療分野や超純水製造など、最高レベルの清浄度が求められる用途では、このLRV値が品質保証の基準となっています。

バクテリア・ウイルス除去性能

中空糸膜の除去性能は、第三者機関による試験で科学的に実証されています。

例えば、ポリプロピレン製中空糸膜(ろ過精度3nm)を用いたバクテリア試験では、LRV>9.0(除去率99.9999999%)という結果が報告されています。

試験菌として使用されたのは、Brevundimonas diminuta(デミニュータ菌)という非常に小さな細菌です。

ウイルス除去性能についても同様に高い結果が出ています。

大腸菌ファージMS2(サイズ0.02μm)を用いた試験では、同じくLRV>9.0の除去性能が確認されました。

これは、中空糸膜が細菌だけでなく、一部のウイルスに対しても高い除去能力を持つことを示していますよ。

ただし、すべてのウイルスが除去できるわけではなく、膜の孔径やウイルスのサイズによって除去率は変動します。

中空糸膜が除去できる物質と除去できない物質

中空糸膜の除去性能を最大限に活用するには、何が除去できて何が除去できないのかを正しく理解することが大切です。

除去できる物質

中空糸膜は物理的なサイズによるろ過を行うため、孔径よりも大きな粒子状の物質を効果的に除去できます。

具体的には、以下のような物質が除去対象となりますよ。

濁り成分や赤錆などの固形微粒子は、中空糸膜の得意分野です。

水道管の老朽化によって発生する鉄サビや、浮遊している濁質はしっかりと捕捉されます。

細菌類は、そのサイズが0.5~10μm程度であるため、0.01~0.1μmの孔径を持つ中空糸膜で99.9%以上除去することが可能です。

一般的な病原菌(大腸菌、サルモネラ菌など)も、中空糸膜によって効果的に除去されます。

一部のウイルスも除去できますが、これは膜の孔径とウイルスのサイズによります。

孔径が十分に小さい(0.01μm以下)中空糸膜であれば、大型のウイルスは除去可能です。

さらに、アスベスト繊維のような微細な固形物や、原虫(クリプトスポリジウムなど)も除去対象となります。

除去できない物質

一方で、中空糸膜では除去できない物質もあります。

最も重要なのは、水に溶解している化学物質やイオンは、孔径よりもはるかに小さいため通過してしまうという点です。

例えば、残留塩素(カルキ)は水道水の消毒に使われる化学物質ですが、中空糸膜では除去できません。

トリハロメタンなどの有機化合物も同様に、分子レベルで溶解しているため通過します。

重金属イオン(鉛、水銀など)も、イオン状態で溶けているものは中空糸膜だけでは除去できないんです。

農薬類や環境ホルモン、最近話題のPFAS(有機フッ素化合物)なども、化学物質として溶解しているため除去対象外となります。

ミネラル分(カルシウムイオン、マグネシウムイオンなど)も通過しますが、これは人体に必要な成分なので、残ることがむしろメリットと言えるでしょう。

このように、中空糸膜は物理的な微粒子の除去には優れていますが、化学物質の除去には別の手段(活性炭など)が必要になります。

中空糸膜の除去性能を支える4つのろ過原理

中空糸膜の高い除去性能は、単に孔の大きさだけで決まるわけではありません。

実は、複数のろ過原理が組み合わさって、総合的な除去性能を実現しているんですよ。

第一の原理は「ふるい効果」です。

これは最も基本的なろ過メカニズムで、膜の表面や内部で膜孔径よりも大きい粒子が物理的に捕捉されます。

いわば、目の細かいザルで粒子を濾し取るイメージですね。

第二の原理は「慣性・衝突」です。

水の流れに乗って移動する粒子が、自らの慣性によって膜表面に衝突し、捕捉されます。

特に粒子の質量が大きい場合、この効果が顕著に現れます。

第三の原理は「拡散」です。

非常に小さな粒子は、ブラウン運動と呼ばれるランダムな動きをします。

この運動によって膜表面に接触した粒子が捕捉される仕組みです。

第四の原理は「静電気引力」です。

膜に静電気が帯電している場合、電気的な引力によって粒子が膜に引き寄せられ、捕捉されます。

これら4つの原理が複合的に作用することで、中空糸膜は孔径だけでは説明できない高い除去性能を発揮するんですよ。

実際のろ過では、粒子のサイズ、形状、流速、膜の材質などによって、どの原理が主体となるかが変わってきます。

浄水器における中空糸膜の除去性能

家庭用浄水器において、中空糸膜は重要な役割を果たしています。

ここでは、浄水器での実際の除去性能について見ていきましょう。

JIS規格で定められた除去項目

日本の家庭用浄水器は、JIS S 3201(家庭用浄水器試験方法)という規格で性能が評価されます。

この規格では、除去対象となる物質が明確に定められています。

基本的な除去項目は、遊離残留塩素、濁り、総トリハロメタン、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、CAT(農薬)、2-MIB(カビ臭)などです。

中空糸膜フィルターを搭載した高性能浄水器では、これらJIS規格の17項目に加え、浄水器協会の自主規格で定められた項目も除去できますよ。

具体的には、鉄(微粒子状)、アルミニウム、PFOS・PFOA(有機フッ素化合物)などが追加除去項目として設定されている製品もあります。

高性能な製品では、除去項目数が30項目以上に達するものもあり、より安心して使用できます。

活性炭との組み合わせで除去性能が向上

実は、中空糸膜単独では化学物質の除去が苦手という弱点があります。

そのため、家庭用浄水器では中空糸膜と活性炭を組み合わせることで、総合的な除去性能を高めているんですよ。

活性炭は、表面に無数の微細な孔を持ち、強力な吸着力によって化学物質を捕捉します。

残留塩素、トリハロメタン、カルキ臭、農薬、有機化合物などは、活性炭によって効果的に除去されます。

一方、中空糸膜は物理的な微粒子、細菌、濁りなどを除去します。

この2つのろ材を組み合わせることで、幅広い種類の不純物に対応できる浄水器が実現するわけです。

高性能な浄水器では、活性炭フィルターと中空糸膜フィルターを2段階で配置し、段階的にろ過する構造になっています。

まず活性炭で化学物質を吸着し、次に中空糸膜で微粒子や細菌を除去するという流れですね。

この組み合わせによって、JIS規格やNSF国際規格など、厳しい基準をクリアする除去性能が達成されています。

中空糸膜の除去性能を維持するためのポイント

どんなに高性能な中空糸膜でも、適切なメンテナンスを行わなければ、除去性能は徐々に低下してしまいます。

ここでは、除去性能を長期間維持するための重要なポイントをお伝えしましょう。

最も重要なのは、定期的なフィルター交換です。

中空糸膜は使用するうちに、捕捉した不純物が膜表面に蓄積し、目詰まりを起こします。

目詰まりが進行すると、ろ過速度が低下するだけでなく、除去性能も落ちてしまうんですよ。

家庭用浄水器の場合、メーカーが推奨する交換時期(一般的に3~6ヶ月ごと、または総ろ過水量が一定量に達した時点)を守ることが大切です。

交換時期を過ぎて使い続けると、フィルターに溜まった細菌が繁殖し、かえって水質を悪化させる危険性もあります。

産業用の大型ろ過装置では、逆洗(バックウォッシュ)という洗浄方法が採用されています。

これは、通常とは逆方向に水を流すことで、膜表面に蓄積した汚れを洗い流す手法です。

逆洗を定期的に行うことで、膜の除去性能を回復させ、長期間安定した運転が可能になります。

また、薬品洗浄やエアスクラビング(空気で膜表面を擦る洗浄)も、除去性能維持に効果的です。

使用環境にも注意が必要ですよ。

水道水の水質が極端に悪い場合(濁りが多い、鉄分が多いなど)、フィルターの寿命は短くなります。

また、水圧が低すぎたり高すぎたりすると、ろ過効率や膜の耐久性に影響を与えます。

メーカーが指定する使用条件の範囲内で使用することが、長期的な除去性能維持につながります。

中空糸膜の除去性能に関するよくある質問

Q1: 中空糸膜はウイルスも完全に除去できますか?

中空糸膜がウイルスを除去できるかどうかは、膜の孔径とウイルスのサイズによって決まります。

一般的なウイルスのサイズは0.02~0.3μm程度です。

孔径が0.01μm以下の高精度な中空糸膜であれば、多くのウイルスを除去できますが、極めて小さいウイルスの一部は通過する可能性があります。

家庭用浄水器レベルの中空糸膜(孔径0.01~0.1μm)では、細菌は確実に除去できますが、すべてのウイルスを完全に除去することは難しいと理解しておきましょう。

Q2: 中空糸膜フィルターの交換時期はどう判断すればいいですか?

基本的には、メーカーが指定する交換時期や総ろ過水量に従うのが最も確実です。

しかし、使用状況によっては早めの交換が必要な場合もありますよ。

判断の目安としては、水の流れが明らかに遅くなった、水に異臭や異味がする、水が濁って見えるなどの変化があれば、交換時期が来ていると考えられます。

また、交換時期を記録しておくことで、うっかり交換を忘れることを防げます。

Q3: 中空糸膜はミネラルも除去してしまいますか?

いいえ、中空糸膜は水に溶けているミネラル分(カルシウムイオン、マグネシウムイオンなど)は除去しません。

これらのミネラルはイオンとして溶解しており、サイズが非常に小さいため、中空糸膜の孔を通過します。

したがって、体に必要なミネラルは残したまま、有害な微粒子や細菌だけを除去できるというメリットがあるんですよ。

これは、ミネラルまで除去してしまう逆浸透膜(RO膜)との大きな違いです。

Q4: 中空糸膜と活性炭、どちらが重要ですか?

どちらも重要で、それぞれが異なる役割を担っています。

中空糸膜は物理的な微粒子や細菌を除去し、活性炭は化学物質や臭いを吸着除去します。

一方だけでは対応できない不純物があるため、両方を組み合わせることで総合的な浄水性能が実現するんですよ。

浄水器を選ぶ際は、中空糸膜と活性炭の両方を搭載した製品を選ぶことをおすすめします。

Q5: 中空糸膜の除去性能は使用開始直後が最も高いのですか?

必ずしもそうとは限りません。

中空糸膜の除去性能は、使用初期は安定しており、交換時期が近づくにつれて徐々に低下していきます。

ただし、適切に設計されたフィルターであれば、メーカーが保証する総ろ過水量や使用期間内は、規定の除去性能を維持できるように作られていますよ。

逆に、使用直後は水の流れが速すぎて、十分な接触時間が確保できない場合もあります。

そのため、使用初期に少量の水を流して馴染ませる「初期フラッシング」を推奨しているメーカーもあります。

まとめ:中空糸膜の除去性能は用途に応じて最適化される

中空糸膜の除去性能について、詳しく見てきました。

中空糸膜は、その微細な孔径(0.01~0.1μm程度)によって、細菌、濁り、微粒子などを高い精度で除去できる優れたろ過材です。

LRV>9.0(除去率99.9999999%)という驚異的な性能を持つ製品もあり、医療分野から家庭用浄水器まで幅広く活用されていますよ。

ただし、中空糸膜だけでは化学物質や溶解性の不純物は除去できないため、活性炭などと組み合わせることで総合的な除去性能が向上します。

浄水器を選ぶ際は、除去したい物質が何かを明確にし、JIS規格の除去項目数や具体的な除去率をチェックすることが大切です。

中空糸膜フィルターを搭載した製品であれば、細菌や濁りに対して高い除去性能を期待できますし、活性炭も併用していれば化学物質にも対応できます。

また、どんなに高性能なフィルターでも、定期的な交換やメンテナンスを怠れば、除去性能は低下してしまいます。

メーカーが推奨する交換時期を守り、適切に使用することで、安全でおいしい水を長く楽しめますよ。

中空糸膜の除去性能は、用途や目的に応じて孔径や材質が最適化されています。

家庭用浄水器から産業用ろ過装置、医療機器まで、それぞれの用途に合わせた性能設計がなされているんです。

あなたのニーズに合った中空糸膜製品を選び、適切に使用することで、その優れた除去性能を最大限に活用してくださいね。