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パン生地と水の硬度の深い関係!硬水と軟水で驚くほど変わる仕上がりの秘密

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パン作りを始めたばかりの方も、長年パンを焼いている方も、一度は「水」について考えたことがあるのではないでしょうか。

レシピには「水」としか書かれていないけれど、水道水でいいの?それともミネラルウォーター?

実は、パン生地の仕上がりを大きく左右するのが「水の硬度」なのです。

同じレシピでも使う水を変えるだけで、生地の扱いやすさ、発酵の進み具合、焼き上がりの食感や風味まで変わってしまうんですよ。

今回は、パン作りにおける水の硬度の重要性から、あなたが作りたいパンに最適な水の選び方まで、詳しく解説していきます。

パン作りで水の硬度が重要な理由

パン作りにおいて、水はただの液体ではありません。

小麦粉と出会ってグルテンを形成し、イーストを活性化させ、パン生地全体をつなぐ重要な役割を担っています。

そして水に含まれるミネラルの量、つまり「硬度」が、これらすべてのプロセスに影響を与えるのです。

プロのパン職人が水にこだわる理由、フランスパンのレシピに「硬度300の水を使用」と指定がある理由は、すべてここにあります。

水の硬度を理解することで、あなたのパン作りは確実にレベルアップしますよ。

水の硬度とは?基礎知識を押さえよう

硬度の定義と計算方法

水の硬度とは、水1リットル中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を、炭酸カルシウムに換算した数値のことです。

単位は「mg/L」で表され、この数値が大きいほどミネラルが多く含まれていることを意味します。

硬度300mg/Lの水であれば、1リットルの水に300mgのミネラル分が含まれているということですね。

軟水・中硬水・硬水の分類

WHO(世界保健機関)の基準では、水は硬度によって以下のように分類されます。

軟水(0~60mg/L未満)

ミネラル分が少なく、口当たりが柔らかい水です。

日本の水道水のほとんどがこの範囲に入り、和食の出汁を取るのに適しています。

中軟水・中硬水(60~120mg/L未満)

適度なミネラルを含み、パン作りに最も適した水とされています。

グルテン形成がスムーズに進み、発酵も安定して行われますよ。

硬水(120~180mg/L未満)

ミネラル分が多く、しっかりとした飲みごたえがあります。

ハード系パンの本場ヨーロッパの水は、この範囲が多いです。

超硬水(180mg/L以上)

非常に多くのミネラルを含む水で、そのままパン作りに使うと生地が締まりすぎることがあります。

コントレックス(硬度1468mg/L)などが代表例ですね。

日本と海外の水の硬度の違い

日本の水道水は、ほとんどの地域で硬度60mg/L以下の軟水です。

東京の水道水で硬度60前後、札幌や福岡ではさらに低く20~40mg/L程度となっています。

一方、ヨーロッパの水は硬度が高く、パリの水道水は硬度250mg/L以上、フランスパンの本場であるフランス全体でも硬度300mg/L前後の地域が多いのです。

この水の違いが、日本とヨーロッパのパンの特徴の違いを生み出している一因でもあるんですよ。

硬水と軟水がパン生地に与える影響

グルテン形成への影響

水の硬度が最も大きく影響するのが、グルテンの形成です。

小麦粉に水を加えて捏ねると、小麦粉中のタンパク質「グルテニン」と「グリアジン」が結合してグルテンが形成されます。

硬水に含まれるカルシウムとマグネシウムは、このグルテニンの結合を強力に促進する働きがあるのです。

硬水で作ったパン生地の特徴

グルテンが強く締まり、弾力のある生地になります。

生地の表面に張りが出て、成形作業がしやすくなりますよ。

ただし硬度が高すぎると、生地が硬くなりすぎて切れやすくなったり、表面が荒れたりすることがあります。

軟水で作ったパン生地の特徴

グルテンの結合が弱くなり、柔らかくベタつきやすい生地になります。

高加水のパンを作る場合、特に扱いにくさを感じるでしょう。

生地がダレやすく、ガス保持力も弱くなる傾向があります。

発酵スピードへの影響

硬水を使うと、軟水に比べて発酵が早く進みます。

これは硬水に含まれるミネラルが、イーストの酵素活動を活性化させるためです。

イーストは様々な酵素反応によって糖を分解し、炭酸ガスとアルコールを生成して発酵を行います。

マグネシウムやカルシウムなどのミネラルは、これらの酵素の働きを助ける補酵素として機能するのです。

実験によると、硬度180mg/Lの硬水で仕込んだパン生地が適正に発酵するのに8時間かかったのに対し、軟水では11時間半もかかったという結果が報告されています。

パン作りのスケジュールを立てる際にも、水の硬度を考慮すると良いでしょう。

生地の扱いやすさへの影響

高加水のパン生地を作る際、硬水を使うと生地の扱いやすさが格段に向上します。

硬水で作った生地は弾力と張りがあるため、丸めても形が崩れにくく、成形作業がスムーズに進みますよ。

一方、軟水で作った高加水生地は、べたつきが強く手や台に張り付きやすくなります。

特に加水率70%以上のパンを作る場合は、水の硬度が作業性に大きく影響することを覚えておきましょう。

焼き上がりの食感と風味への影響

硬水で作ったパンは、気泡の膜が厚くモチモチとした食感になります。

噛むほどに小麦の旨みが口の中に広がり、深い味わいを感じられるでしょう。

これはミネラルが発酵を促進することで、小麦粉中の酵素が活発に働き、でんぷんが糖に分解されたり、タンパク質がアミノ酸に分解されたりするためです。

軟水で作ったパンは、やや軽めの食感になりますが、硬水で作ったパンと比べると味わいが薄く感じられることがあります。

パン作りに最適な水の硬度とは

一般的なパン作りに推奨される硬度

パン作りに最も適しているのは、硬度50~120mg/L程度の中硬水です。

この範囲の水を使うと、グルテンがしっかり形成されながらも生地が締まりすぎず、発酵もスムーズに進みます。

作業性が良く、安定した品質のパンが焼けるため、プロの現場でもこの硬度が推奨されていますよ。

特に硬度100mg/L前後が理想的とされており、多くのパン職人がこの数値を目安にしています。

パンの種類別に適した水の硬度

ハード系パン(バゲット・カンパーニュなど)

推奨硬度:180~300mg/L

フランスパンなどのリーンなパンには、硬水が適しています。

準強力粉は強力粉よりもタンパク質が少ないため、グルテン量も少なめです。

硬水のミネラルがグルテンを強化することで、少ないグルテンでも大きく膨らみ、特徴的な大きな気泡と厚い膜ができるのです。

本場フランスの水の硬度が250~300mg/Lであることを考えると、本格的なバゲットを作りたいならこの硬度を目指すと良いでしょう。

ソフト系パン(食パン・バターロールなど)

推奨硬度:50~100mg/L

菓子パンや食パンなどのリッチなパンには、軟水から中硬水が適しています。

これらのパンは強力粉を使い、砂糖やバター、卵などの副材料が多く入ります。

副材料が生地の粘りを和らげる効果を発揮するため、あえて硬水を使う必要はありません。

日本の水道水で十分においしく作れますよ。

自家製酵母パン

推奨硬度:100~180mg/L

自家製酵母でパンを作る場合、硬水を使うと酵母の活動が活発になります。

酵素の働きが活性化され、小麦粉のでんぷんが糖に分解されやすくなるため、酵母のエサが豊富に供給されます。

種起こしの段階から硬水を使うと、発酵がスムーズに進み成功率も上がるでしょう。

水の硬度がパン生地に影響する科学的理由

ミネラルとグルテニンの関係

カルシウムとマグネシウムは、グルテニンのタンパク質鎖同士を架橋結合させる働きがあります。

グルテンは弾力を担うグルテニンと、粘性を担うグリアジンで構成されていますが、ミネラルは特にグルテニンの結合を促進します。

その結果、プリプリとした弾力のある強い生地ができあがるのです。

この現象は、タンパク質の等電点付近でのイオン結合によって説明されますが、簡単に言えば「ミネラルがグルテンの糸をしっかり結びつける接着剤のような役割を果たす」と理解すると良いでしょう。

ミネラルと酵素活性の関係

イーストや自家製酵母の発酵活動には、無数の酵素反応が関わっています。

でんぷんを糖に分解するアミラーゼ、タンパク質をアミノ酸に分解するプロテアーゼなど、様々な酵素が働いています。

これらの酵素が機能するためには、補酵素としてのミネラルが不可欠です。

特にマグネシウムは、多くの酵素反応に関与しており、発酵の進行速度に大きく影響します。

硬水を使うことで酵素活動が活発になり、発酵が早く進むだけでなく、複雑な風味成分も生成されやすくなるのです。

pHとミネラルの緩衝作用

パン生地は発酵が進むにつれて、乳酸や酢酸が生成され酸性に傾いていきます。

イーストは弱酸性の環境で活発に活動するため、この変化は発酵にとって好ましいものです。

ただし、ミネラルには緩衝作用があり、pHの変化を抑える働きがあります。

超硬水のようにミネラルが多すぎると、生地が酸性になりにくくなり、かえって発酵が遅くなることがあるのです。

このバランスが、パン作りに最適な硬度が中硬水から硬水の範囲である理由の一つなんですよ。

日本の水道水でパンは作れるのか

日本の水道水の特徴

日本の水道水は、ほとんどの地域で硬度30~60mg/Lの軟水です。

これは日本の地質が火山性で、水が地中に滞留する時間が短いためです。

軟水は和食の出汁を引き出すのに優れており、日本料理との相性は抜群ですね。

水道水でも美味しいパンは作れる

結論から言えば、日本の水道水でも十分においしいパンは作れます。

特にソフト系のパンや、砂糖や油脂を多く含むリッチなパンは、水道水で何の問題もありません。

実際、多くの家庭でのパン作りやパン教室では水道水が使われており、それで十分においしいパンが焼けています。

水道水を使う場合は、カルキ臭が気になるなら一度沸騰させて冷ましたものや、浄水器を通した水を使うと良いでしょう。

水道水でハード系パンを作るコツ

水道水(軟水)でバゲットなどのハード系パンを作る場合、少し工夫が必要です。

こね方を調整する

軟水では生地がダレやすいため、しっかりと捏ねてグルテンを形成させましょう。

パンチの回数を増やすことで、グルテンの網目構造を強化できますよ。

加水率を調整する

軟水は生地が柔らかくなりやすいので、レシピよりも加水率を2~3%下げると扱いやすくなります。

発酵時間を長めにとる

軟水では発酵がゆっくり進むため、時間に余裕を持って発酵させましょう。

低温長時間発酵にすると、ゆっくりとした発酵でも深い風味を引き出せます。

パン作りにおすすめのミネラルウォーター

そのまま使える中硬水

エビアン(硬度304mg/L)

フランス産のミネラルウォーターで、硬度がちょうどバゲット作りに適しています。

そのまま使えるので計量も簡単で、初めて硬水でパンを作る方にもおすすめですよ。

飲料水としても飲みやすいので、パン作り以外にも使えるのが利点ですね。

ヴィッテル(硬度315mg/L)

こちらもフランス産で、エビアンと同様にハード系パンに適した硬度です。

クセが少なく、パンの風味を邪魔しません。

薄めて使う超硬水

コントレックス(硬度1468mg/L)

非常に硬度が高いため、そのまま使うと生地が締まりすぎます。

水道水と8:2や7:3の割合でブレンドして、硬度180~300mg/Lに調整して使いましょう。

コストパフォーマンスが良いので、頻繁にハード系パンを作る方におすすめです。

ブレンドの手間はありますが、経済的に硬水でパンを作り続けられますよ。

水の硬度を調整する方法

硬水を作る方法

軟水の水道水に、食品グレードのにがり(塩化マグネシウム)やカルシウム剤を添加することで、硬度を上げることができます。

ただし添加量の計算が難しく、味に影響することもあるため、初心者にはミネラルウォーターのブレンドをおすすめします。

超硬水を薄める方法

コントレックスなどの超硬水と軟水をブレンドする際の目安は以下の通りです。

硬度180mg/Lにしたい場合:コントレックス1:軟水10の割合

硬度250mg/Lにしたい場合:コントレックス1:軟水5の割合

硬度300mg/Lにしたい場合:コントレックス1:軟水4の割合

使用する軟水の硬度によって微調整が必要ですが、この比率を基準にすると良いでしょう。

よくある質問

Q1. 水道水とミネラルウォーター、本当に違いが出るの?

はい、特にハード系パンでは明確な違いが出ます。

硬水で作ったパンは気泡が大きく、モチモチとした食感で味わいも深くなります。

一方、ソフト系パンでは違いが感じにくいこともありますよ。

まずはハード系パンで試してみると、違いを実感しやすいでしょう。

Q2. すべてのパンで硬水を使った方がいいの?

いいえ、パンの種類によって最適な硬度は異なります。

ソフト系パンは軟水~中硬水、ハード系パンは硬水が適しています。

無理にすべて硬水にする必要はありませんよ。

Q3. 浄水器を通した水でも大丈夫?

はい、問題ありません。

ただし、逆浸透膜方式の浄水器はミネラル分も除去してしまうため、パン作りには向きません。

活性炭方式など、ミネラルを残すタイプの浄水器がおすすめです。

Q4. 沸騰させた水でも硬度は変わらない?

沸騰させると一部のミネラル(炭酸カルシウムなど)が析出して硬度が若干下がることがありますが、大きな変化はありません。

カルキ臭を取るために沸騰させた水を使っても、パン作りには問題ありませんよ。

Q5. pH値も気にした方がいい?

はい、pH6~7の弱酸性の水が理想的です。

イーストは弱酸性の環境で最も活発に活動します。

ほとんどのミネラルウォーターや水道水はこの範囲内なので、通常は気にしなくて大丈夫でしょう。

Q6. ミネラルウォーターは冷蔵庫から出してすぐ使える?

いいえ、レシピで指定された水温に調整してから使いましょう。

パン作りでは仕込み水の温度が非常に重要です。

冷蔵庫から出したての冷たい水では、イーストの活動が鈍くなってしまいますよ。

まとめ:あなたのパン作りに最適な水を選びましょう

パン作りにおける水の硬度の重要性、理解していただけたでしょうか。

水に含まれるミネラルが、グルテン形成、発酵、そして最終的なパンの風味や食感まで、すべてに影響を与えているのです。

ソフト系のパンを作るなら、日本の水道水で十分においしく作れます。

でも、本格的なバゲットやカンパーニュに挑戦するなら、ぜひ硬水を試してみてください。

エビアンやコントレックスをブレンドした水で焼いたパンの、あの大きな気泡とモチモチの食感、噛むほどに広がる小麦の旨みは、きっとあなたを驚かせるはずですよ。

水を変えるだけで、こんなに変わるのか!という感動を、ぜひ体験してみてくださいね。

まずは次回のパン作りで、いつもと違う水を使ってみましょう。

その違いに驚いて、パン作りがもっと楽しくなるはずです。